君色キャンバス
灰色
ドンドン、ドンドン!
「…ん…?」
祐輝が、音につられて目を開けると、ぼんやりと、視界が曇った。
目をこすると、幾らかは視界ははっきりとする。
寝転んだまま、周りを見回せば、見えたのは琴だった。
音楽室の奥の部屋の小さなスペースで寝た所為か、身体の節々が痛む。
ゆっくりと立ち上がって背伸びをするが、身体は動きにくいままだ。
ドンドン、という音はまだ続いている。
そして__その音の中に、微かに笑い声が混じっている気がした。
とりあえず物置き部屋を出ると、もう一度 背伸びをする。
「何の音だよ…」
そう言いながらポケットに手を突っ込むが、目当ての物をつかむ事ができない。
「…あれ?」
ポケットの中を見て、煙草が無いのを確認すると、昨日の事を思い出す。
確か昨日、自分は昼に煙草を捨てた。
吸いたい衝動を抑え、ため息を吐きながらドンドン、という音が音楽室にまで聞こえてくる中、祐輝は扉に向かって歩く。
ドンドン、ドンドン!!
「うるせえな…」
扉を開ける前に時計を見た。
八時二十五分だ。
扉に手をかけ、ガラッと横に引く。
廊下に出ると、ゆっくりとその音のする方向を見て__祐輝は眠気が消えた。