君色キャンバス
「あれ、ヤンキーさんだ!なんでここに居るの?」
光が、大袈裟に不思議そうな表情をして、祐輝の方を向く。
その声に昨日の記憶が思い出され、一気に不機嫌になった。
「どうでも良いだろ。お前等 美術室になんか用でもあんのかよ」
四人が顔を寄せて、祐輝を見ながらクスクスと笑う。
その声は小さく、しかし、話は確かに聞こえた。
窓から日が差し込む白い廊下で、四人の周りは黒暗い。
「ね、聞いた?あのヤンキーさん『美術室に何か用でもあるのかよ』だって…やっぱし付き合ってるんじゃない?」
光が、これ見よがしに言った。
雪がそれに反応し、口角を上げながら、小馬鹿にしたように笑う。
「付き合ってる…かは、雪は知らないなぁ〜。光ちゃん、あのヤンキーねぇ、アダ名は『悪魔』って言ってねぇ」
「へぇ…悪魔なの?あんた」
光が、可愛らしく首を傾げる。
「そうよ」
春奈が、棘を所々に含んだ言葉を、一つずつ紡いでいく。
「あんなクズみたいな悪魔と付き合ってるとしたら、久岡もクズの仲間入りね」
「うるせえ、黙れよ!!」
祐輝が堪え切れず、叫んだ。
ピタリと話し声が止み、四人がジッと祐輝の方を見る。
美術室の曇りガラスに、一つの人影が写った事に、誰も気づいていない。