君色キャンバス



「あれ、ヤンキーさんだ!なんでここに居るの?」



光が、大袈裟に不思議そうな表情をして、祐輝の方を向く。



その声に昨日の記憶が思い出され、一気に不機嫌になった。



「どうでも良いだろ。お前等 美術室になんか用でもあんのかよ」



四人が顔を寄せて、祐輝を見ながらクスクスと笑う。



その声は小さく、しかし、話は確かに聞こえた。



窓から日が差し込む白い廊下で、四人の周りは黒暗い。



「ね、聞いた?あのヤンキーさん『美術室に何か用でもあるのかよ』だって…やっぱし付き合ってるんじゃない?」



光が、これ見よがしに言った。



雪がそれに反応し、口角を上げながら、小馬鹿にしたように笑う。



「付き合ってる…かは、雪は知らないなぁ〜。光ちゃん、あのヤンキーねぇ、アダ名は『悪魔』って言ってねぇ」



「へぇ…悪魔なの?あんた」



光が、可愛らしく首を傾げる。



「そうよ」



春奈が、棘を所々に含んだ言葉を、一つずつ紡いでいく。



「あんなクズみたいな悪魔と付き合ってるとしたら、久岡もクズの仲間入りね」



「うるせえ、黙れよ!!」



祐輝が堪え切れず、叫んだ。



ピタリと話し声が止み、四人がジッと祐輝の方を見る。



美術室の曇りガラスに、一つの人影が写った事に、誰も気づいていない。



< 147 / 274 >

この作品をシェア

pagetop