君色キャンバス
その絵を見て、誰かがフッと口角を上げる。
「俺、笑ってねえのな。結構 笑ってるつもりだったけど」
「…違う…笑ってる」
そう言うと、紗波は立ち上がった。
「…じゃね」
その誰かに何かを言わせる前に、紗波は中庭を抜けて走って行った。
ノートと鉛筆、消しゴムを持って、校舎内に入っていく。
「…あいつ」
誰かが何かを言おうとした時、
「流岡!お前また授業サボってんのか!さっさと教室に戻れ!!!」
どこからか聞こえる、怒声。
「誰が戻るかよっ!!!」
流岡(ナガオカ)、と呼ばれた男子は、一つ大きく返事をしてから、中庭から逃げ出した。