君色キャンバス
海色
あれから、三日が過ぎた。
少し曇った空の中、湿っぽい風が辺りに漂って、梅雨らしい匂いを運んでくる。
祐輝はその日、久しぶりに自分の椅子に座り、授業を受けた。
驚いた表情を浮かべる教師を尻目に、祐輝はずっと考え込んでおり、授業の内容は頭に入っていなかった。
黒板には、祐輝には図形にしか見えない文字が幾つも並んでいる。
(関わんな、か…)
祐輝が机に頬杖をついて、ノートをめくりながら心の中で呟いた。
周囲の生徒たちは、一体 何があったのか解らず、チラチラと祐輝の方を向いている。
ノートの殆どは白紙だ。
(…関わんなって事はつまり、自分に構うなって事だろ?…まぁ、それは良いとして)
窓の方を向いて、たまに雲に見え隠れする太陽を眺める。
雲の厚さによって、光りは白、灰色、淡黄に変わった。
(…久岡を、どう、笑わせれば良い?めったやたらに馬鹿な事しても、あいつはぜってえ笑わねえぞ…)
どれだけ頭を働かせても、これという方法は出ない。
紗波を笑わせる事。
祐輝はその方法を、一心に考えた。
しかし、思いつかない。
廊下ですれ違っても、言葉も交わさず横を通り抜けるだけの毎日だ。
美術室に行っても鍵はかかっており、そもそも、紗波に会う勇気がなかった。
あの日から、六十六日が過ぎた__