君色キャンバス
空は赤く染まり、雲は空に浮かび、風に乗って流れている。
祐輝は、ズボンが汚れる事を気にせずに、砂浜に座った。
その隣に、紗波も、膝を抱えて座る。
ポケットに違和感を感じたが、紗波はそのまま海を眺めた。
崖に切り取られた砂浜から見える海が、やけに壮大に思える。
「ここ、良く亮人とか、他のダチとかと来るんだ。穴場だろ?狭いけど」
赤い夕焼け空を見ながら、祐輝はポツンと呟いた。
波が高くなって、朝よりも五メートルほど砂浜を占領していた。
夕陽が、赤い穏やかな海に消えていく。
「多分、だけどな」
カモメが悠々と空を泳ぎ、砂浜は紅く輝いた。
よくみれば、砂浜に苔むした貝殻を背負ったヤドカリが、チョコリチョコリと歩いている。
「久岡が笑ったら…」
紗波はその言葉を聞くと、無表情で、ゆっくりと祐輝の方を向いた。
祐輝の横顔を見つめるその瞳には、感情はあまり感じられなかった。
黒曜石の瞳は、夕陽に照らされて、少しだけ赤く光っている。
「俺、すっげえ幸せだと思う」
そういうと、祐輝はサラ砂に身を預け、寝転んだ。
そして、紗波から顔を背ける。
背ける刹那に見えた顔は、海の彼方にある夕陽のせいか、真っ赤だった。
紗波も祐輝の真似をして寝転ぶと、温められた砂浜に埋れ、目をつぶった。