君色キャンバス
「…あっ、ごめんな!?」
祐輝が慌てて、紗波から離れた。
暖かさは闇に紛れ、程よく冷たい空気が紗波にまとわりつく。
「…マジでごめんな??」
よほど悪い事をしたと思ったのか、祐輝は何度も謝る。
「…良い、から」
紗波の言葉を聞くと、祐輝ははぁ、とため息をついてから、立ち上がった。
「本当、ごめん。…帰ろうぜ」
月明かりが眩しい。
紗波も立ち上がると、制服についた砂を払い、坂道へと向かう。
上り坂から見える海は黒く、遠くの島に小さな明かりが見える。
紗波と祐輝は、バイクに乗った。
エンジンを入れると、無音の中で、ブロロロロ、という音が木霊する。
道に出ると、ライトをつけ、緩やかなスピードで走っていく。
「そういや、今日は終戦記念日だったな。罰当たりな事したかもしれねえ。…ま、良いか」
祐輝の背中に抱きついていると、潮の香りに混ざり、そんな言葉が聞こえた。
月の光が辺りに余韻を撒き散らし__今日は終わる。
祐輝は、紗波に教えてもらった道を走り、家まで送った。
暗い家。
「…じゃあな」
平凡な田舎の街の片隅に、海の匂いが漂う。
紗波は、ポケットから貝殻を出すと、屋根裏の棚の上に置いた。
下に降りると、シャワーを浴びてからベッドに潜り込む。
ガチャ、という音、
「紗波!どこに居た!」
という声が家に鳴り渡ったが、紗波はグッスリと眠った。