君色キャンバス



「…あっ、ごめんな!?」



祐輝が慌てて、紗波から離れた。



暖かさは闇に紛れ、程よく冷たい空気が紗波にまとわりつく。



「…マジでごめんな??」



よほど悪い事をしたと思ったのか、祐輝は何度も謝る。



「…良い、から」



紗波の言葉を聞くと、祐輝ははぁ、とため息をついてから、立ち上がった。



「本当、ごめん。…帰ろうぜ」



月明かりが眩しい。



紗波も立ち上がると、制服についた砂を払い、坂道へと向かう。



上り坂から見える海は黒く、遠くの島に小さな明かりが見える。



紗波と祐輝は、バイクに乗った。



エンジンを入れると、無音の中で、ブロロロロ、という音が木霊する。



道に出ると、ライトをつけ、緩やかなスピードで走っていく。



「そういや、今日は終戦記念日だったな。罰当たりな事したかもしれねえ。…ま、良いか」



祐輝の背中に抱きついていると、潮の香りに混ざり、そんな言葉が聞こえた。



月の光が辺りに余韻を撒き散らし__今日は終わる。






祐輝は、紗波に教えてもらった道を走り、家まで送った。



暗い家。



「…じゃあな」



平凡な田舎の街の片隅に、海の匂いが漂う。



紗波は、ポケットから貝殻を出すと、屋根裏の棚の上に置いた。



下に降りると、シャワーを浴びてからベッドに潜り込む。



ガチャ、という音、



「紗波!どこに居た!」



という声が家に鳴り渡ったが、紗波はグッスリと眠った。



< 165 / 274 >

この作品をシェア

pagetop