君色キャンバス
「何しにきたの」
小百合の声が、いつもよりトーンが高くなる。
正義感が人一倍 強い小百合の心に、“怒り”がこみ上げてくるのを感じた。
光が口角を上げて、ニヤッと笑う。
「別に?来ただけですけど、何か?」
基本、穏やかな小百合には珍しく、ジッと光を凝視する。
余裕の視線と、怒りの視線がぶつかり、金木犀はまた一つ、花を落とした。
似つかわしくないほど、華やかな香りが辺りに立ち込める。
「一つ良い?光」
「なんでもどーぞー!」
光の、他人を小馬鹿にしたような態度に憤りを覚えるが、グッと我慢をすると、思い事を口に出す。
「…もう、紗波をイジメるのはやめて」
「…なんで?あんなに面白いのに」
光が金木犀に近寄り、その夕焼け色の花をつまむと、パラパラと地面に落とした。
光は揺れる事なく、真っ直ぐに小百合を睨む。
小百合も、光の視線を見返した。
沈黙が二人の間を覆う。