君色キャンバス
「光、今のうちにやめないと、きっと後悔する事になるよ」
小百合が、強い声で、光を見つめたまま呟く。
光はその言葉を聞くと、鼻で小百合をせせ笑った。
「なにその安っぽい『青春漫画』みたいな台詞。キモ過ぎる!」
そして__フッと笑みを消し、小百合の方にジトリとした視線を向けた。
「…それに、なんでイジメをやめなきゃなんないの?久岡が悪いのに。…勉強しても敵わないんだから、しょうがないでしょ?」
噴水の水は日光に照らされ、キラキラと輝きを曲げながら反射している。
(紗波が…悪い?違う)
掴みかかりそうになるのをこらえ、小百合は光を見据えた。
それを避けるかのように、光は小百合に背を向けると、歩いて行く。
「…絶対にやめないから」
そう、言葉を捨てて。
小百合が見据えた先は、光の尊大な、怯えたような後ろ姿だった。
光の姿が、曲がり角を曲がって見えなくなる。
「…」
金木犀の気の根元に歩み寄ると、地面に落ちたたくさんの夕焼け色の花を、手のひらに乗せた。
その刹那、後ろから
「なんなんだ?あいつ」
という声がして、小百合は振り向いた。
「見てたの?」
「見てた」
そこには、ポケットに手を入れ、曲がり角を見つめる祐輝が居た。