君色キャンバス
舛花色
階段を上り四階に行くと、誰も通らない廊下を歩いて行く。
行き先は、紗波が居るであろう、美術室だ。
長い廊下の窓の外には、チラホラと紅や橙色の葉が見えている。
「…秋か」
祐輝は美術室の前についた。
中は相変わらず薄暗く、曇りガラスの奥には哀しみのようなものが漂っている。
美術室の前には、さっきまで人が居たような気配がしていた。
コンコン、とノックをすると、聞こえるのは恐怖に染まった声。
「…誰」
震える声を聞いて、許せない気持ちになりながら、返事をする。
「…俺だよ。流岡」
十秒ほど経ってから、また、紗波の声がした。
「…っ、来ないで!」
それは、全てを恐れたような声だった。