君色キャンバス
四人がたじろぐ。
「…な、なによ、なんであんたがここに居るの?訳わかんない」
光が意地悪くそう言ったが、明らかに動揺して居るように見える。
祐輝が美術室の外へと足を踏み出すのを、紗波はただ、見つめていた。
「ふざけんなよ、ぶん殴ってやろうか、あぁ!?」
ギロ、と悪魔を連想させるような鋭い瞳で、四人を凝望する。
「てめえらはいったい、何なんだよこっちこそ意味わかんねえよ。なんで久岡を…イジメんだよ!」
悲しげな、低くドスの効いた声が、紗波の耳に入る。
美術室の前に立つ五人の向こう側の窓を見ると、ポツポツと雨が降っていた。
冷たい雨に一羽の小鳥が打たれている。
美術室の前に目をやると、雪が挑発的な笑みを浮かべ、祐輝の問いかけに答えていた。
「決まってんじゃん。ウザいから」
春奈が、そんな事も解らないの?とでも言いたげな表情で、祐輝を見ている。
「いっつも無表情で、キモイから」
真美がそう言って、祐輝を睨み返した。
光は、言葉を放つのを少しためらったように、ジッと紗波を見て__悔しそうな声色で言った。
「…久岡が、ムカつくから」
秋がもうすぐ終わる事を知らせる木枯らしが、廊下を通り抜けた。
光の、床にしゃがみ込む紗波を見下げる焦げ茶色の瞳は、とても冷たい。