君色キャンバス
__紗波が、口を開く。
「私だって…認めてもらっていない…。流岡と、小百合以外には」
「…二人にも…。認めてもらってる…。くせに…」
光が、床に手をついたまま、立つ紗波を見上げる。
いつも、光は屈辱感に包まれていた。
「…光だって」
紗波が、無表情で言う。
「光だって…雪や春奈や真美に…。認められてるでしょ…?」
その時、パッと美術室が明るくなっていき__山の向こうから、一筋の眩しいほどの太陽が、美術室に差し込んだ。
街全体はまだまだ暗いものの、太陽はやっと、明かりを放ち始める。
「私も…家族には、認めてもらっていないから…その哀しさは解る…」
紗波がしゃがみ込み、光に視線を合わせた。
(…どうせアタシを…惨めにでも…思ってんでしょ…?…っ…)
悔しさに、ギリギリと歯を鳴らし、床につけた手を握りしめる。
今の自分を客観的に見れば、とても惨めだと思った。
「…アタシは…。誰にも、認められてない…。あの三人にも…家族にも…。昔はアタシを認めてくれていた、小百合にも見捨てられて…」
「…それなら」
紗波の言葉に、光は顔を上げた。
紗波は感情を顔に表さないまま、無機質な声で言った。
「…私が、光を認めるよ…」
「…え…?」
光は不思議そうな表情を浮かべ、なんの表情もない紗波の整った顔を見つめた。