君色キャンバス
「紗波、おはよ」
月曜日、チャイムを鳴らすと、出てきたのは冬服を着た紗波。
空は土曜日とは違い、青く晴れ、雲の間から太陽が差し込む。
冷たい風が吹く。
紗波が、鞄を持って、家を出ると、鍵をかけた。
「今日は出席しなよ。テストがあるらしいから」
昨日、担任が言っていたことを思い出し、言う。
紗波はしばらく間を取ってから、ゆっくりと頷いた。
そして、小百合の隣に並んで、歩き出した。
秋の少しの名残り__枯葉も雨によって流され、道路の幾つかの水溜りに浮かんでいる。
「そういや…小阪先生、最近 絵を発表してないみたいだよ」
小百合が、不思議そうに言って、紗波の方を見る。
その横顔には、感情がない。
「スランプなのかもね」
「…へぇ」
興味なさげに言って、前を見る紗波の瞳は、心なしか光っていた。