君色キャンバス
紗波は、鉛筆を握る手を止める事はせず、亮人に言う。
「…松島」
「ん?…なんだよ…」
右手をどけ、紗波に目を向ける亮人に、問うた。
「…恋って、なに」
無感情の声。
「……はい?」
亮人が、素っ頓狂な声を上げた。
__みるみるうちに、亮人の顔色が紅くなっていく。
「え、いや、あれ?久岡ってそんなキャラだったか?え、久岡って…」
紗波は、亮人の疑問に答えず、ただ、噴水を描き続けている。
黒白の噴水から湧き出す水が、かがよっている。
「え、恋ってなにって言われても…つか、いきなり何!?」
「…別に」
その時、ちょうど、キーンコーン、と卯花高校のチャイムが鳴った。
「…あ、じ、じゃあ、お、俺 行くな」
俺 別に不良じゃねえし、言いながら、亮人が立ち上がる。
微妙な空気が、二人の間に流れた。
「…えーっと…授業中に考えるわ。また、昼休みに来るから」
その声が聞こえていないかのように、紗波は黙々と手を動かしている。