君色キャンバス
「…なんで、そう思う…?」
紗波の無機質な声を聞いて、亮人が照れたように微笑む。
「んー、まぁ…ぶっちゃけ、俺ってさ、片想いなんだよなー」
そう言って思い浮かべたのは、何日か前、校舎の廊下で見かけた小百合と__名前を知らない、男子生徒。
__二人が付き合っている事は、すぐに解った。
小百合が、本当に優しい笑顔を、その男子生徒に向けていた。
逃げるようにその場から去った事を思い出して、頭を掻く。
「彼氏が居るとは聞いてたけど…直に見た時は落ち込んだな。かなり衝撃的で。…悔しかった」
でも、と亮人は話を続ける。
「ま、片想いでも良いか…なんて思っちまって。…あいつを思い浮かべたら、なんとなく…幸せになんだよ」
だから、そう思った。
そう言って、亮人が紗波の方を向く。
(…まぁ…やっぱ悔しいけどさ)
「…小さな幸せ…」
紗波が小声で呟き、顔を上げて、空を見た。
亮人もつられて、空を眺める。
気持ち良いほどの青空と、真っ白な雲が、そこには、あった。