君色キャンバス
黙って弁当を食べる亮人と、黙々と絵を描く紗波。
やがて、弁当を風呂敷に包んだ亮人が、立ち上がった。
「じゃな。俺 行くわ…あ、そうそう」
亮人が、一度 背を向けてから、何かを思い出したかのように呟く。
「祐輝なぁ、意外とモテんぞ。俺よりフツメンのくせに。…ま、あいつは無自覚だけどな」
亮人が中庭から消えたあと、紗波は、もう一度、亮人の言葉を口に出した。
「…恋は、小さな幸せ…」
紗波の脳裏に、祐輝が現れる。
爽やかな風が、中庭を吹き抜けていく。
幸せのようなモノと、ギュッと胸が締め付けられるような感覚を感じる。
(…私は…)
自分に問いかけ、紗波はグッと__ノートの一ページを破り取った。
紙から手を放すと、風に乗って、空へ舞い上がっていく。
__モヤモヤとした気分の中で、紗波は空を仰いだ。