君色キャンバス
「ハハハハハッ!お前そんな事で心配してんのか?俺が闇討ちに会うとでも?」
「充分あり得るじゃねえか」
片眉を下げ、亮人が言う。
「先輩たちは常日頃から、お前の事が気に入ってねえみたいだし、最近はあんま騒ぎを起こさねえから、何か変な事でも勘ぐってる」
祐輝の笑い声が、さらに大きくなる。
「ハハハッ!バカはお前だろ!…俺が__この悪魔様が、そんなしょうもない喧嘩に負けるとでも?」
「…悪魔は健在、か…」
亮人が、安堵しているのか呆れているのかよく解らない声で、呟いた。
__そんな空気もつかの間、亮人の声は真剣になる。
「…お前は良いとしても、最近よくつるんでる久岡とか…河下にまで迷惑かけたら、男として最低だぞ」
「そんくらい解ってるって」
道の端に並ぶ、狭々しいマッチ箱のような住宅街を見ながら、祐輝はいたずらっぽく言う。
「そん時は頼りにしてんぜ、亮人ちゃん。…河下くれえ、お前が守ってやれよ」
__亮人が、祐輝の何気無く言った一言にうつむいた。
「…お前さぁ、デリカシーねえの?…河下には付き合ってる奴がいる」
「あの負けん気 強え奴がねえ…そいつから奪えば良いだけじゃん。魅了させろ」
「…はぁ、んな事できねえ」
シンと無音が訪れ、聞こえるのはサンドストームのような雨の音ばかりになった。
雨樋を伝う水音や、道路の上に溜まった水が華やかに飛び跳ね、軽い音楽をかき鳴らす。