君色キャンバス
山吹色
朝、紗波は六時に起きた。
はしごを下ろし、階段を下りて一階に行くと、朝の準備をし始める。
時折 周りを気にするようにチラリと横目で見回すが、そこに影はない。
__六時、三十五分。
紗波は玄関から出ると、湯気にも似た霧のかかった道を歩いて行った。
手には、教科書、ノート、筆箱のみの入った紺色の生徒鞄。
たまに、ホッホホー、と、鳩の独特な鳴き声が聞こえてくる。
上を見上げれば、電信柱の上に留まっていた。
頭が緑色で、鳴く度に揺れ、その緑色は光る。
隣のとなり、小百合の家の前を通り過ぎると、学校へ向かった。
校門は、六時から開いているはずだ。
朝一に学校に来て、自主勉強をする生徒が居るからである。
紗波は勉強などをする気はないが。
雨は止んで、空は相変わらず灰色だった。
しかし、天気予報では昼間から晴れと言っていたので、心配はいらないだろう。
五月の草花が、あの小さな公園の花壇に咲いていた。
しかし、近所の子供らに踏みつけられたのだろう、萎れた花もあった。
紗波はそれらを横目に、ゆっくりと歩いて行く。