君色キャンバス
銀色
十二月、二十五日。
クリスマスの日は休校となり、明日で二学期は終わる。
外では、ぶるりと震え上がるような寒さと、身を切り裂く刃のような風とともに__雪が降っていた。
リンリン、と静かに鈴の音を鳴らしながら、雪は、中庭に咲くポインセチアにもふわりと積もる。
ポインセチアの赤と緑の葉が、雪の下から覗く。
美術室の他に、校舎内には警備員以外、誰も居ない。
紗波は黒い暗幕を羽織り、外に降る白い雪をジッと眺めていた。
初雪は儚く、白い花びらのように、地面に散って行く。
美術室の中は、音のない世界だった。
たまに、雪がひさしの上に降り、雪の結晶がしゅうっと溶けていく様子を見つめる。
雪の結晶が反射する、小さな小さな光から紗波は目を話さなかった。
__不意に、無音の世界に、コンコンとノックの音が響いた。
紗波が振り返ると、扉の曇りガラスに映る、背の高い影。
壁の時計を見ると、短針は八、長身は三を示している。
扉に歩み寄り、手をかけ、カチリと音を鳴らす。
「…久しぶり、久岡。俺だよ」
長い時間 聞かなかった優しく低い声。
ガラガラと音を鳴らして、扉がゆっくりと開いていく。
紗波は息を飲む。
紗波の瞳に映ったのは、真っ黒な髪の男子__祐輝、だった。