君色キャンバス
生徒玄関を出ると、白い雪が、紗波の黒く長い髪に舞い降りる。
黒髪の祐輝が、笑う。
「…ホワイトクリスマスとはな。雪ってなんか…綺麗だよな」
紗波は、静かに首を縦に振る__祐輝は空を見上げた。
つられて、顔を上げる。
灰色の雲に覆われた空から、白い大粒の雪が降る。
舞う雪のあとを追うと、地面には、五センチメートルほどの雪が積もっていた。
踏むたびに、ザクリとした感覚。
心地いい感触に、紗波はしゃがみこみ、両手に雪をすくった。
冷たいが、ふわふわと軽い。
しかし、雪はすぐに溶けて行って、紗波の両手を濡らしていった。
祐輝が言う。
「かなり寒いけど…バイクで良いか?やっと戻ってきたんだ」
「…うん」
紗波は立ち上がると、はぁっ、と濡れた手に息を吹きかけた。
少し雪の積もった校門をよじ登り、祐輝は、紗波に手を差し伸べる。
「つかめよ。滑ったら危ない」
校門の上に身を乗り出した紗波は、その手をためらいなく掴んだ。
大きな手のひらから、雪とは正反対の暖かさが伝ってくる。
程よく雪かきのされた道路は、まだ、凍ってはいなかった。
「良かったー。凍ってたら絶対 転ける」
明るい声でそう言った祐輝。
紗波にとって、祐輝の全てが明るく、暖かく感じる。
「…うん」
駐車場、祐輝は黒いバイクにまたがると、何分かマフラーを吹かせた。
「…乗れよ」
ゆっくりとバイクの後ろにまたがると、祐輝をギュッと抱き締める。
暖かい心臓の鼓動が、聞こえる。
無音の道を走り抜けていく__