君色キャンバス
雪をゆっくりと踏みしめた。
祐輝の優しい声だけが、白銀の中に響いてくる。
二人以外の音を、真っ白な雪が、吸い込んでくれた。
「なぁ、久岡。俺って、小説家になれると思うか?」
「…え…?」
そう言って、祐輝は笑った。
プラチナの輝きを放つ雪に、紗波と祐輝は、自然と心惹かれる。
「…いや…俺、まぁ、将来の夢が小説家なんだよ。こう見えて、国語科全般はまぁ…成績 良いぜ?」
「…知らない」
素っ気なく返事をすると、祐輝がだよな、と言った。
「俺の文章力で小説家んなれる訳ねえけどさ。なんか、憧れて…。そういや、久岡って夢とかあるのか?」
__その言葉を聞いて、紗波は小さく首を振った。
祐輝がクスリと、笑う。
「…そうか。ま、ゆっくり探せば良いだけだし…」
祐輝の微笑みを、紗波はジッと暗い瞳で見つめた。
その笑顔を見て、思う。
(…私をもう一度、笑わせてほしい)
雪が絶え間なく降り続き、二人を白い世界に閉じ込めているようだった。
「ハハッ、綺麗だなー!」
そう言って、祐輝は顔を上げる。
咲き誇る白い花を見上げる横顔に、そっと心が囁く。
(…流岡になら)
心洗われるように、紗波は、白い雪に瞳を向けた。
「…流岡」
「ん?なに?」
優しい声に、紗波は__
「…私を、助けて」
救いを求めた。
「え…?」
祐輝に__全ての闇を、話した。