君色キャンバス
「…それ、マジか…?」
話し終わった時、祐輝はそう言って、紗波の瞳をまじまじと見つめた。
紗波は目を伏せる。
渦巻く闇色に心が染められ、白い雪に助けを求める。
祐輝の驚いたような表情を、紗波はジッと眺めた。
__しばらく、時間が経った。
白い雪は止み、辺りに冷たく美しい余韻を残している。
キラキラと空気中に光る雪の欠片。
紗波がうつむいていると、祐輝は低い声で言った。
「…もしも、久岡がそれで苦しんでるのなら…」
紗波が顔を上げると、今までに見た事もないような表情の、祐輝の茶色い瞳と目が合った。
「…今から、それをブチ壊しに行こう。
…俺も着いていくから」
紗波はジッと、祐輝の瞳を見つめる。
揺らぎはなく、茶色い瞳に映るのは、紗波と、その髪に舞い落ちた白い花弁だけだ。
__頷けない。
「…でも」
「そんな事が続いて良いとは思えない。久岡が苦しんでいるなら、なおさら。…確かに、世界は汚いな。…前、久岡が言ったみてえに」
祐輝の瞳は、真剣だった。
寒く、震え動く心にソッと手を差し伸べ、祐輝は紗波に言う。
「…久岡の絵を汚されたくねえんだ」
フルフルと首を振る。
祐輝が、微笑んだ。