君色キャンバス
若紫色
空色に塗られたその西洋型の建物の中からは、オレンジ色の光りが漏れている。
建物の駐輪場にバイクを止め、祐輝の後ろから下りると、すっと息を吸う。
冷たく冷えた空気が、身体に入り込む。
遠くの空は小焼け気味で赤く、辺りは紺色に染まっていた。
駐輪場や駐車場の中には、何人かの人影がうごめいている。
「…行くぞ、久岡。絶対 離れねえから」
祐輝がそう言うと、茶色い瞳を明かりの漏れる建物に向けた。
その瞳に、オレンジが灯る。
雪がまたチラチラと、姿を見せ始めた。
暗い世界がまた、白に彩られ、夜と雪の対比を際立たせている。
「…久岡」
紗波は祐輝の方を向いてから、黒いコートを脱ぎ、手渡した。
「…寒くないから、良い」
「…解った」
駐輪場の所々に積もる雪を避け、祐輝の隣に並んで、紗波は歩く。
紺色の制服は、闇に溶け込む。
建物の入り口につくと、自動ドアが開き、二人を招いた。
眩しいほどの光りに、体が拒否反応を起こす。
「…大丈夫か?」
祐輝の優しい言葉に、紗波はただ一度だけ、コクンと頷いた。
自動ドアをくぐり抜けると、中は、暖かい空気が満ちていた。