君色キャンバス
「…っ…こんばんは」
紗波が二人に話しかけた。
二人の男は紗波の方を向き、一人はこんばんは、と返し__もう一人の顔は、なぜか蒼い。
「…こ、こん…ばんは」
小阪が気まずく返事をした。
横のスーツ姿の男が、紺色の制服を着た紗波を見て、何かを耳打ちしている。
「…お知り合いですか?」
スーツ姿の男が紗波を見る目は、明らかに“ソレ”だった。
小阪の血の気が、みるみるうちに引いていくのを祐輝と紗波は見る。
「し、知らん。こんな奴ら」
その言葉にかぶせるように、紗波は、二人に言った。
「…私は…久岡 紗波…私は、小阪 弘の__久岡 踉の娘」
「…え?」
小阪の顔色は雪のように白くなり、スーツ姿の男は、顔をしかめた。
「小阪先生、娘さんですか」
「知らん…知らん、こんな奴!」
「ふざけんな」
祐輝が一歩前に出て、画家、小阪 弘の__久岡 踉(ヒサオカ ロウ)の胸ぐらをつかんだ。
ザワザワと建物内が騒がしくなる。