君色キャンバス



紐で心臓をくくりつけられているような、痛み__紗波は静かに、ノートに向かって囁いた。



「…君を、描こうか__」



そっとカンカン箱に入った色鉛筆の中から“黒”の鉛筆を取り出し、シュッと柔らかく髪を流す。



黒い短髪に縁取られているような輪郭の中に、祐輝を思い描いていく。



カンカン箱の中から“茶色”を取り出し、輝きを持たせ、瞳に塗っていった。



肌色の上に白を重ねる。



色白な祐輝の肌。



次に、“桜色”の色鉛筆を取り出し、すっと薄く塗っていく。



__しかし、桜色を消して、また、描き直す。



何度 消してもまた、笑顔が描けなかった。



五月の、中庭で祐輝の笑顔を初めて見た時の事__笑顔を描きたいと思った時の事が想起される。



『…何を描こう?』



そう言った瞬間に返ってきた答え。



『俺を描いてくれよ』



それが祐輝との出会いだった。



その後、祐輝の笑みを浮かべる明るい表情を無性に描きたくなり、ノートに描き出した。



笑顔は描けなかったが、思えば、あの日から、次第に祐輝と関わっていった。



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