君色キャンバス
紗波が、中庭の一角の隅にある花壇を、しゃがんで覗き込んだ。
花壇の端に小さく咲いた、シロツメクサを見つめる。
花と花との間に溜まった雨水が、白色に染まっていた。
青々と広がるクローバーの野原の中に、白い花がピンと咲いている。
紗波は花壇に座ると、数学のノートを開き、下敷きを敷いて膝に乗せ、鉛筆を軽やかに踊らせた。
シロツメクサの小さな花の数々や、辺りを埋めるクローバー、クローバーの上に溜まる雨水が現れてくる。
その絵は細かく繊細。
白黒の世界だが、シロツメクサは見事に咲き誇っていた。
__ただ、そこに咲き誇っていた。
そのシロツメクサに意味なんてない。
シュッシュッと擦れる音。
風に揺れるシロツメクサの花。
校舎の外側に掛けられた時計の針は、いつの間にか、長針は八、短針は一を指していた。
「…紗波!!!」
声が聞こえ、紗波は鉛筆を止めてその方向を見たのだった。