君色キャンバス
ガラガラッ、と少々 荒々しく美術室の扉が開けられた。
流石に紗波も筆を止めて、その方を見る。
「…あ、昨日のサボりか」
そこに居たのは、紗波が描けなかった笑顔を浮かべる男子だった。
「またサボり?」
軽く話しかけてくる男子に、紗波はいつもの調子で返事をする。
「…そう…あなたと同じ」
「おい、俺はサボり__だな、うん」
紗波はもう一度キャンバスに向き直ると、最期の桜を咲かせた。
桜吹雪の絵。
その絵を見ても、何も感じないが。
後ろを見ると、あの男子はパイプ椅子に立て掛けてある月に目を近づけている。