君色キャンバス
黄色いスポットライトに当たるキャンバス。
キャンバスの中には、パイプ椅子にもたれかかって、月の光に照らされながら、眠っている祐輝が居た。
茶色い髪、真っ白な肌。
顔も、本人の要望とは違って二枚目には描かれていないが、流岡 祐輝という人間をしっとりと表している。
背景は、美術室。
後ろに立つ、艶かしい『ミロのヴィーナス』や勇ましい『ミケランジェロのダビデ像』のレプリカが、妖しく光る。
眠っているからか、祐輝に表情は無い。
「…これ俺ですか」
「…うん」
紗波は冷たい顔のまま、頷いた。
「俺、こんな間抜けな顔して寝てた?」
深く頷く紗波に、祐輝が噴き出す。
「マジか…あー、恥ずかし」
何度も何度も、その絵を眺める。
紗波は、そんな祐輝を見ている。
その時。
コツン…コツン…コツン…
どこからか、靴音が聞こえた。
「…なに、この音…?ま、ま、まさ、かゆうれ、幽霊…!?」
祐輝の白い肌が、さらに青白くなった。
紗波は黙って耳を澄ましている。