君色キャンバス
「それを?」
紗波は黙ってその暗幕を被ると、暗幕の前を開いて、現役の男子高校生に言う。
埃が舞い散る。
「この中 入って」
「…は?え、そん中に?」
頷く。
祐輝が目を見開くと、茶色い瞳の中に紗波が映っているのが見えた。
(布ん中で、久岡と二人きりで息を潜めるのか!?)
紗波はジッと待っている。
「…解った」
そう言うと、祐輝はキャンバスを持って、棚の上に乗せた。
「なんか警備員に見せたくない」
そして、紗波と一緒に分厚い暗幕をひっかぶって机の下に潜り込んだ。
長身の祐輝にはかなりキツイ。
暗幕の中で、紗波の身体と祐輝の身体の彼方此方が引っ付いている。
祐輝の鼓動がドキドキと早くなり、今度は顔を赤くした。
しかし、暗幕の中は暗いため、顔の色は解らない。
「うぉ、狭っ…」
「静かに」
紗波が小声で囁いた瞬間、カチッと音がして、祐輝が閉めた鍵を開け、ガードマンが懐中電灯を手に、入ってきた。
動きを止める。
祐輝の手首の脈は、また、別の意味で早くなった。
次々と懐中電灯で照らされていく。
息を押し殺す。