君色キャンバス
飴色
コンコン、コンコン。
美術室の扉が、規則的な音を出して祐輝を起こした。
ふぁぁ、と欠伸をし、周りを見る。
(…美術室?)
最初、どうして自分がここで寝ているのか解らなかったが、昨日の記憶の欠片がだんだんと頭に当てはまってきた。
(…あぁそうか、昨日 確か美術室で寝たな…)
パイプ椅子にもたれて、放心したように美術室の壁の一点を見つめた。
昨夜とは一変して明るい光。
遠くから、チュンチュンと雀の鳴き声が聞こえてくる。
コンコン、コンコン。
また、音が聞こえた。
「…誰だよ」
低い声でそう呟き、立ち上がる。
そして、扉に向かって踏み出そうとして、慌てて足を止めた。
床に、一人の女子が寝ている。
(…あ、ひ、久岡も昨日…)
コンコン、コンコンと、まだ扉はしつこく鳴って、祐輝に多少のイラつきを覚えさせる。
(自分で開けろよ、ったく)
イライラとしながら、床で眠る紗波を避けて、扉に手をかける__が、鍵が掛かっていて開かない。
鍵を開けようとすると、昨日の昼間に聞いた声が祐輝の耳に入った。
「紗波ー?居るー?」
小百合の声だ。
祐輝は一気に不機嫌になって、ガチャッと鍵を開けると勢いよく扉を開いた。
「…え、流岡!?」
小百合が目を見開き、いつもとは違う鋭い瞳で祐輝を睨む。
「なんであんたがここに居るの!?」
「あ?居ちゃ悪いかよ!」
小百合が少し気後れしたように後退するが、その瞳は祐輝を睨んだまま。
「紗波は無事でしょうね!!」
「あ?なんもしてねえっつの!!」
祐輝が、ドンッと足を鳴らした。