君色キャンバス



紗波は何が起きているのか解らない様に首を振りながら、時計を見た。



八時十五分だ。



「さ、教室に行こ…」



小百合が紗波を立ち上がらせて、制服についた埃を優しく叩き落す。



くすんだ黒い埃が、美術室を舞った。



手を引かれ、扉に歩いて行く。



美術室から出る瞬間、紗波は棚の上に置かれている、眠る祐輝が描かれたキャンバスに目を止めた。



しかし、何も言わず目を逸らすと、美術室から出て、鍵をかけた。



埃 舞う美術室は、日の光にさんさんと当たり、静寂に包まれている。



< 47 / 274 >

この作品をシェア

pagetop