君色キャンバス
紗波は家に入ると、手提げを靴箱に掛け、制服を脱いで、浴室に入った。
五分後に出てくると、制服を洗濯機に入れ、カモミールの香りのする洗剤を垂らすと、スイッチを押した。
私服に着替えると、二階に登り、屋根裏部屋を開く。
階段を上がると、上から扉を閉め、その日、出てくる事は、無かった。
夜、空は曇っている。
玄関の開く音。
「紗波〜!!居るだろう!?」
一昨日 聞いたしゃがれたダミ声。
屋根裏部屋の真下に、声が動く。
「紗波!出てきなさい!」
夜が更けた。
紗波が屋根裏から出てくる事は無かった。
次の日、靴箱に掛けられた手提げ袋は消えていた。