君色キャンバス
紗波は反応をせず、小百合は思わず顔を上にあげた。
そこには、下品に笑う男と、後ろでニヤニヤとしている男二人。
小百合が反応したのがいけなかった。
「みかど、っていうラーメン店 行きたいんだよなぁ、俺ら。ちょっと案内してくれよ。奢るぜ?」
気持ちの悪い高い声で、一番前に居る男が小百合を見下ろしながら言う。
(…ウザい)
小百合が不快そうに眉間にシワを寄せるが、男達に効果はない。
後ろで笑っていた男の片割れが、紗波のノートを覗き込んだ。
「うっわ、すげえじゃん!?良いね、今まで見た中で一番サイコー」
男三人が、誘うための小道具を見つけたように紗波の描いた絵を褒め称える。
「これ、君が描いたの?すげえ上手いじゃん!」
「これプロ行けるよ!狙おうぜ!あっ、俺 画家の友達 知ってるから紹介してやろうか!」
「うわー、これプロ以上だろ!あり得ねえー!」
大げさに褒め称えて、紗波の美しい顔を見ながらニヤニヤと笑う。
小百合が不安そうに紗波の方を見ると、右手に力を込めているのが、解った。
フルフルと身体が小刻みに震え始める。
「私達はこの辺の人間じゃないから知りません」
呆れ顏で、小百合はキッパリと断ろうと、した。
「…あ?」
さっきまでの下品な笑い顔から一変し、男の顔はみるみると引き攣っていく。