君色キャンバス
「あ?別に居ても良いだろうが」
ぶっきらぼうな声で、祐輝は適当に返事をした。
小百合が信じられない、とばかりに口を開く。
「助けてくれたのは嬉しいけど、なんで流岡な訳?絶対なんか企んでるでしょ」
「は?企んでねえし。お前なんかどうでも良いんだよハゲ」
「ハゲじゃないし!じゃあなんで助けたのよ!」
ヤンキーの友達が苦笑を浮かべて、今や戦闘状態は万全の祐輝と小百合の間に、黒い傘を差す。
「まぁまぁ。お前、祐輝の知り合い?」
「俺はこんな奴 知らねーよ。知ってるのはそこの奴だけ」
祐輝が、傘を持っていない右手で、紗波の方を指差した。
その刹那、パン、と音がして、祐輝の手が叩かれた。
「人に人差し指 向けんじゃない!私だってこんな奴 知らないからね!」
「五月蝿えんだよハゲ!」
祐輝の友達が苦笑いを浮かべたまま、二人の間に立っている。
「まぁ、落ち着いてくれよ、河下…だっけ」
「え?あ、うん、そうだけど」
小百合がすぐに返事をすると、祐輝に向かい直る。
「マジで意味が解んない!なんで助けた訳!?」
「それは…」
祐輝が口ごもる。
雨がゆっくりと、確実に弱くなっているのが解った。
「え?なによ…ったく、黒歴史が増えた」
「ブツブツうっせえな…」
「五月蝿くて悪かったわね」
小百合がフン、と、紗波の方を向き、祐輝と祐輝の友達に背を向けた。