君色キャンバス
「…でもまぁ、一応お礼は言っとこうか…あ、ありがとう…あっ、紗波もお礼 言いなよ!」
小百合が、照れ臭さを隠すためか、紗波にそう言った。
祐輝の友達が、ぼうっ、と小百合の向日葵色のワンピースを着た背を見る。
雨が傘から滑り落ち、水溜りに軽い音を奏でた。
「…ありがと」
無機質な声、表情の無い顔で言われ、祐輝は思わずプッと噴き出す。
「んな無表情で言われても嬉しくねえよ!…くくっ」
祐輝があの明るい、眩しい笑顔を浮かべた。
「…あの、河下だっけ?」
祐輝の友達が、小百合に話しかける。
「俺、松島 亮斗(マツシマ アキト)ってんだけどさ、ちょっとその__メルアドくれねえかな」
小百合が不思議そうに祐輝の友達__松島 亮斗を見て、
「え、良いけど?」
と鞄に手を入れた。
祐輝がその意味を察して、また、噴き出す。
紗波がもう一度ベンチに座って、絵の続きを描いている。
「あ、ついでだし…河下…と、誰、紗波だっけか」
亮斗が祐輝に尋ねる。
「久岡だよ、久岡 紗波」
「喋んないでよダイオウグソクムシ!」
小百合が携帯から目を放して祐輝に言い放った。
「あ?五月蝿いこのゴミムシ!」
祐輝が言い返す。