君色キャンバス
春色
屋根裏部屋の天窓から、昨日と同じ曇った空が見える。
木の時計を見れば、七時五十七分。
紗波が屋根裏から出ると、、ゆっくりと階段を下り、一階に向かった。
無言で、パン入れの中にある食パンを取ると、トースターで焼く。
三分後、トースターから出てきたのは、キツネ色にこんがりと焼けたトースト。
ダイニングの電気にキラキラ光る、黄金色のバター。
ダイニングの中心にある四人掛けのテーブルに皿を置くと、そこに座り、無表情で淡々と食べる。
サクサク、と、紗波が食パンをかじる音がダイニングに響く。
四人掛けのテーブルに紗波は一人、嫌にちっぽけに見えた。
食べ終えると、紗波は服を着替え、顔を洗ってから、また屋根裏に上がった。
椅子に座れば、余裕に町を眺められる天窓。
天窓の前に座ると、紗波は自分の目から見える町を一望した。
緑色の山。
灰色の空。
静かな町。
紗波は長いまつ毛を伏せると、ベッドに倒れ込んで、もう一度 寝息を立て始めた。