君色キャンバス
瑠璃色
__六月、三日、火曜日。
渋谷に出掛けてから、祐輝とすれ違う事はなく、毎日が過ぎた。
ムシムシと、梅雨の季節が近づく中、今日は気持ちの良い快晴だ。
紗波は起き上がると、いつも通りの朝の時間を過ごした。
いつもより少し遅い、七時四十五分になると、鞄を手に家を出て、卯花高校へと向かう。
セーラー服やブレザーを着た他校の高校生達が、賑やかに道を行き交っている。
紗波は一人で高校までの道を歩いて行った。
靴箱に着くと、上靴をつまんで逆さにしてみる。
…チャリリン…
金色の画鋲が目立つほど、窓から差し込む明るい太陽の光に、反射した。
イジメは止まらない。
冷ややかな目で画鋲を暫らく見てから、教室のある三階に登った。
他の教室の前を通ると、明るく騒々しい声と物音が聞こえる。
二年三組に着くと、白いスライド式の扉を開けた。
教室に疎らに散らばる生徒達を尻目に、自らの席につくと、大きく書かれた『死ね』の文字の上に鞄を置く。
紗波がイジメに反応しない事を見て、きっと担任は胸を撫で下ろしているだろう。
大小様々な、無意味な文字の羅列が、紗波の机を埋めている。
汚い物でも見るかの様な目で、他の生徒は紗波の机を見る。
紗波は準備を終わらせ、教室を出ようと立ち上がると、扉に手をかけた。
開けた瞬間、目の前に居たのは、小百合だった。