君色キャンバス
「…またサボるの?」
苦い笑顔で、小百合が言った。
「そう」
「解った…あ、紗波、聞いた?」
廊下に出た時、小百合はいきなり紗波に問いかけた。
目をキラキラと光らせて、さっきまでの苦笑いとは反対に、楽しそうに微笑んでいる。
「なにを」
楽しげな声に対し、紗波は無味乾燥な声で返事をした。
「なんかさ、明後日?に、転校生 来るらしいんだって。ね、女の子かな?」
小百合によれば、金曜日、紗波がサボった時間に、担任が転校生が来る事を匂わせる言葉を言ったようだ。
『新しい仲間が増えるかも』、という、思わせぶりな言葉で。
「知らない」
いかにも興味が無いと言う様に背を向けると、廊下を歩いて行く。
後ろで、小百合のため息と、扉を閉める音がした。
最上階へ繋がる、西階段の途中の踊り場を回ろうとして、紗波は足を止めた。
階段を登った先にある窓の庇に、寸胴の、小さな雀が五羽 留まっていた。
校庭の砂場で砂を浴びたのか、茶色い羽が薄っすらと白い。
ぼう、とその雀達を眺めてから、紗波は階段をあがって行った。
チュンチュン、と鳴きながら、五羽の雀は、広い空に飛んでいく。