君色キャンバス
祐輝の茶色い瞳が、キョロキョロと、目の中を泳いだ。
解るような、解らないような__いや、きっと自分は解っていないだろう。
整理をしようと、目を閉じる。
(つまり、えーと…もしもこうなってた場合はどうする?それを考えさせるのが夢の世界…を描く事…だよな?多分…)
薄く目を開けて、チラリと紗波の美しい顔を正面から見た。
その表情は読み取れない。
(で、げ、現実の世界が…んー…)
成績下位五番手の祐輝にとって、頭の中を整理するのは並大抵の事ではない。
なかなか理解が出来ない。
(で、えーと…今の世界はこうだ、これを、お前ならどう感じる?それを問いかけるのが…現実の真実を描く事????だよな?多分?な?え?)
頭の中で、ガラクタがごちゃごちゃと入り乱れる。
紗波は祐輝をずっと眺めている。
(世界は、こうだ、って真実を見せる…この世界を見て、一体、お前は、何を感じる?…それを問いかける…のが、絵?って事か)
理解 出来たと感じるが、完全に解ってはいない。
他人の世界観を完璧に理解するのは、人間には出来ないだろう。
ギーン…ゴーン…ガーン…ゴーン…
チャイムが鳴った。
祐輝は何と無く美術室に居辛くなって、軽く手を振ると、扉を開けた。
祐輝が出た後の美術室は、すぐに静まり返る。
何も言えなくなって、ポケットに手を突っ込むと、ぶらぶらと校舎内を歩き回った。
今日は、教師に見つかる事はなかった。