君色キャンバス
教室に行けば、他の女子生徒達が三人ほど集まって話していた。
紗波は気にせず席に座ると、その話はピタリと止まって、チラチラと紗波を見ながら、その三人は話し始める。
冷たい、黒い目で。
小百合はそんな目から紗波を守るように、あえてその三人から紗波が見えない角度に立った。
その小百合を見て、三人は更にヒソヒソと話し始める。
しかし、二人は全くもって気にしてはいない。
「で、紗波…彼氏がさぁ」
「…興味ない」
小百合が何かを話そうとするのを、紗波はバッサリと切った。
紗波はいつもこうなので、小百合はその度に「はいはい」と言って、別の話題に変え、紗波と話そうとする。
紗波は何を話題としても、興味がないと嫌な顔をするが。
しかし、この話題だけは、誰よりも興味深く聞く。
「小阪 弘先生、新作を発表したって」
小百合のその声を聞いて、顔をあげる。
小阪 弘(オサカ ヒロ)先生とは、最近デビューし始めた画家だ。
「…どんな絵」
「確か…何かの花の絵だった」
「…あっそ」
客観的に見れば、何とも首を傾げたくなる会話だが、紗波にとってはこれでも興味を持った方だ。
小百合はちゃんと、そこを解っている。
教室の中には、さっきよりも光を強めた太陽がサンサンと差し込んで、少し暖かくなっていった。
生徒達が登校してくる。
あの三人組も、話題を変えたらしい。