君色キャンバス
暗幕の隙間から覗くと、あの日とは違う若い警備員が、懐中電灯を片手に持っていた。
その警備員は、なぜか眉を顰め、口を半開きにして、歩き回っている。
「…ハ…ハ…」
呟きにならない呟きを漏らしながら、フラフラと美術室の中を照らしていき__
「ハ、ハックショイ!!」
突然 立ち止まって、くしゃみを数回 繰り返した。
紗波の身体が、自然に固くなる。
子猫をチラリと見ると、目が白く光り、黒い耳が立ち、毛が逆立っていた。
祐輝の幻影が、不意に子猫と重なる。
__紗波の心臓が、一度ドクンと跳ね上がった。
紗波が少し慌てふためく。
子猫が暗幕の中で、もそもそと動く。