君色キャンバス
若草色
すぅ、と水に浮かんでいくように、だんだんと意識がはっきりとしてくる。
周りを見回せば、昨日の一日を過ごした美術室だ。
窓に切り取られた空は、白とも灰色とも言えない雲が殆どを埋めていた。
季節は梅雨、今夜辺りは大雨が降りそうだ。
壁にかけられた時計は、七時十七分を指している。
立ち上がって、背筋を伸ばし、伸びをすると、頭の中の霧が晴れていく気がした。
「…ん」
視界の端に入ったキャンバス。
紗波が、キャンバスに歩み寄ると、ソッと自分が描いた子猫を眺めた。
それは、決して下手な物ではなく、むしろその真反対と言っても良い。
しかし__感情の無い黒毛の子猫は、どこか不気味に感じられた。
制服についた埃を払い、キョロキョロと周りを見て、昨日の子猫を探す。
しかし、その姿は見受けられず、紗波は目を伏せた。
手櫛で髪を梳くと、長い黒髪がサラサラと揺れる。
美術室を出ると、紗波は教室に向かった。
__教室には、あの三人が居たが、今日は特に何もされておらず、紗波はノートを取り出すと鉛筆画を描き始めた。
時たま、チラチラと、三人が紗波の方を見る。