君色キャンバス
キーン…コーン…カーン…コーン…
一限目の始まりを告げる、鐘の音が校舎に鳴り響いた。
教台に立った理科の担任教師が、怪訝そうに眉を寄せて紗波の方を見る。
紗波は滅多に授業を受けないため、それも仕方の無い事だった。
「…えー、今から小テストを行います」
理科教師がそう言って、手に持った理科のテストを配る。
「抜き打ちひでぇ!」
「山沢先生 鬼ー!」
と、生徒たちは不満気な声を次々と漏らすが、理科教師は淡々とテスト用紙を机に配っていった。
理科のテストを配り終わると、理科教師が自らの席に座るのが見えた。
テストが始まる。
紗波はテストの隅に、小さな小さな花を描き始めた。
その花は、幾重にも花弁が重なり、美しい織物を連想させる。
教室に、うーん、という唸り声や、鉛筆をカツカツと机に当てる音が鳴る。
そんな中、紗波のテスト用紙の解答欄は、全て正解で埋まっていた。