君色キャンバス
「…なんで」
紗波が言った。
祐輝は頭を精一杯 働かせながら、紗波に語りかける。
「正確には、一つの条件をクリアしていれば、幸せって言えると思う。条件ってのは」
祐輝が紗波から目を離し、隣に咲くアジサイの根元にその視線を移す。
そして、微かに笑う。
「…友達が、居る事」
祐輝がアジサイの根元を指差した。
紗波は絵を描くのをやめ、その人差し指が指した先に目をやり、それを見つめた。
人差し指が差したのは、自分の隣に咲くアジサイと__その隣で小さく咲く、青い花だ。
その青い花は少し枝垂れており、アジサイに寄り添うかのように、その大きな葉にもたれかかっている。
「イジメられててもさ、それを助けてくれる友達が居れば__俺がアジサイだとすれば、まぁ、幸せって言えるな。…これが」
祐輝が最後に、付け足すように言った。
「アジサイの絵を見て俺が持った、一つの世界観だ」
紗波の身体が固まった。
祐輝は優しく、微笑んだ。