異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



「……そんなの、すぐには信じない」


あたしは帝国の皇子をまっすぐに見据え、自分の率直な想いを話した。


「あたしがこの世界に来て一番多く過ごしたのがセイレスティア王国だから、庇うんじゃない。
そこで生きてる人たちと間近で見て、聞いて。生身で接してきたから判る。
……あなたは少なくともひとつの嘘をついている」


それは、彼自身が語った言葉の中にあった。


『ほう? どうしてそう言える?』

「あなたがついさっき言ったでしょう。“誰だって不都合な真実は蓋をするものだ”……って。あなた自身も決してそうしてないと言える?
それとも、ディアン帝国の民は、生まれてから死ぬまでひとつも嘘をつかないという正直者なのかしら」

『……確かにな』


本当に愉しげに皇子が笑う。そんなに可笑しかったか?


『打てば響く。こんな手応えのある女は初めてだな』

「あたしは女じゃありませんから」


きっぱり言ってやると……ポカンとした顔をした後。


オカマか!と皇子は腹を抱えて笑いましたが。蹴ってもよろしいですよね?


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