異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



『それはともかく、おまえは帝国のモノになる』


銀髪の皇子は既に決定済みのように話す。


「あたしはモノじゃないんですけど」


『帝国での行動は全てが大司教の管理下に置かれる。神に仕える身となり、女神として聖女として暮らす事になるだろう』


「……そんなの勝手に決めないでよ! 作物を育てる手伝いはするから、後は自由にさせて。郊外に家を一件だけ貸してくれれば後は勝手に暮らすから」


そうだ。あたしの望みは地味で平凡な暮らしだ。伝承の姫だの女神だの、大それた存在じゃない。


お世話になったセイレスティア王国なら、まだいろいろと未練はあるけど。今や考えたって仕方ない。自力での脱出が不可能なら、とりあえず着いていっていつか戻れる方法を探さなきゃ。

無意識に腕を擦ってるうちに、左の手首に見慣れない腕輪を見つけた。緑色の石で出来てるみたいだけど、冷たくないどころか肌にしっくり来る。なんだろうこれ?


そんな中……あたしの頭にふと思い浮かんだ顔があった。


それは。


『仕方ない。おまえはその力ゆえに生かされている。もっとも、他にも方法がないでもないが』

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