異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



「あなたの妃になれ……って言うのはナシよ」

『ほほう』

帝国皇子は、ヒュウと口笛を吹いた。


『既に求婚されていた……という噂は本当だったか』

「残念ながら。本気じゃないのは確かでしょうけど」


ティオンの眼差しや数々の甘い言葉には、正直何度も惑わされそうになった。


だけど、彼は本気で言ってるわけじゃない。それくらいはあたしにだって判る。


彼はあたしを国に引き留める手段として、自分の手管を使ったに過ぎない。


ティオンの言動を真に受けて本気で悩んでいたなら、騙されたと腹も立つかもだけど。


あたしは、傷つきようがない。甘い言葉の数々は、はなから信じてなどいなかったのだから。

彼に好意を持たれる価値なんて、あたしには無いし。都合よく勘違していのぼせたりしたら、ティオンが可哀想だし。あたし自身も惨めな気持ちになる。

別に、自分を卑下する訳じゃない。あたしは単に現実を見据えてるだけだ。

ティオンやライベルトの真心や誠意は疑わないけど、信用以外の耳障りのいい言葉は全てがお世辞に過ぎないんだろう。


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