異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



ティオンにもライベルトにも、相応しい姫や王女はたくさんいる。あたし一人にかかわり合っているばかりではないはずだ。

ティオンの興味もライベルトの忠誠も、いつか消える。あんなキラキラ人たちのそばにいられた事が奇跡みたいなものだった。


(もしもディアン帝国からセイレスティアに帰れたとしても、どこか田舎でっそりと暮らそう。恩を返せたら……日本に帰ればいい)


元々、あたしはこの世界の人間じゃない。だから、及ぼす影響は最小限に限る。


……農作物を盛大に繁茂させてるだけでも相当な影響と言えるけど。


この世界に暮らす人々に影響はさほど及ぼしてないはず。


……あたしが消えたって……困る人は誰一人いない。ちょっとだけ思い出すくらいで……また綺麗なお姫さまに夢中になる。


そう考えた瞬間。


胸が締め付けられ、とてつもなく泣きたくなってきた。


心が、痛い。


辛くて……苦しくて。抑えようと思うのに、勝手に涙が出てきて慌ててうつむいた。


なに……


何で。どうしてこんな……!


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