異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『……恋を、したか』
ビクリ、と体が跳ねた。
「ち……違うわ! 絶対に、違う! あたしは……恋なんて、しない!!」
もしも突然気付いたこの感情が恋だとしても、絶対に認めるわけにはいかなかった。
……100パーセント実る確率がない絶望だけの恋なんて、悲しすぎる。
あまりに自分が哀れで惨め……だから。
そこまで痛くて、可哀想な子になりたくない。
「もう、いいでしょ! あたしの事は放っておいてよ。女神でもなんにでもすればいい。だけど、もうあたしに関わらないで!!」
帝国皇子の見透かされそうな目から逃れようと、あたしは身体を抱えて頭を膝に埋めた。
『……あまり思い詰めるなよ』
意外なことに皇子はあたしにそう言うと、自分のマントを頭から被せてくれた。 そして、御者へ何か言うためか前へ出ていった。
「……くっ……」
ここには、誰もいない。
だったら、泣いてしまおう。
声を押し殺しながらだけど、久しぶりに涙を思いっきり流した。