異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
『ユズ、帰ろう。セイレスティアへ……』
「セイレ……スティア?」
『そうだ。俺がずっと護るから……何からも』
帰る……どこへ?
セイレスティア……王国。
帰る。
みんなのところへ……。
みんなで暮らした、あの場所へ。
あたしはマントで見えないまま、無意識にコクリと頷いてた。
『帝国の皇子を斬っておいて、みすみす逃がすと思うか?』
『ならば戦うまでだよ……兄さん』
ライベルトは、迷うことなく言い放った。
『よし、それじゃあ脱出するぞ。俺にしっかりと掴まれ!』
もう一度あたしが頷くと、ライベルトがなにか小さく呟いた。すると、マント越しに見えるほどに何かが輝く。
『跳ぶ! 離れるなよ』
「……うん」
一瞬、体が重力から解放された。
けれど次の瞬間、確実に衝撃を受ける。
たぶん、着地のためのだ。
あたしは大したことがなかったけど……ライベルトは? 彼が余分に叩きつけられたことは容易に察せたから、心配でならなかった。