異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
ティオンは立ち上がり、剣を手にすると……馬車へ歩み寄る。
そして、傍らにいた帝国皇子を見据えた。
『帝国第二皇子、ライネス殿下。領土内でのあなたの暴挙を赦すわけにはいかないが、新年祭が近い今、無闇な摩擦は避けたい。素直に撤退を約するならば、今だけは見逃そう』
『……お情けというわけか』
『違う。ユズの前で無意味な殺生はしたくないだけだ』
ティオンは優しげな光を消し、冷徹な為政者の目に変える。
『そんなに死に急ぐならば、引導を渡してやろう。理由などどうとでも後付け出来る』
『……惚れた女のため……か』
ライネス皇子は剣を支えに立ち上がると、その切っ先をティオンに向けた。
『手ぶらで帰るのも割りに合わん。土産話にお手合わせ願おうか、ティオン王太子殿下』
『……承知した』
ティオンは……
ライネス皇子に近づくと、治癒魔法で彼の傷を塞いだ。
正々堂々と勝負するために。
2人は川沿いの広い場所で向き合い、剣を構えた。